ご挨拶
患者・国民・会員に応える日本歯科審美学会を目指して
 

 時の流れは、太古の昔から一度も止まることなく、また決して後戻りすることもなく、すべての事象を受け入れながら前へ、前へと進んでいます。さらに、時は万人に対し等しく流れ、ある時は濁流となり、またある時は清流となってそれぞれの未来へと誘います。しかし、我われは何事にもひた向きに取り組むことによって、有形無形の財産を次世代へと引き渡すことが叶います。

 

 本学会は、1988年4月17日に日本歯科審美研究会として産声を上げ、来年には“働き盛り”の30歳を迎えることになります。時の流れの中で、同じ志をもつ者が巡り逢い、集い、共に歩みを進め、その会員は5,464名(本年5月31日現在)を数える我が国有数の歯科医学医療学術組織へと成長しています。これからの歯科医療を牽引する若き歯科医師・歯科衛生士・歯科技工士にとって、より『魅力ある学会』となるよう、多大な尽力をなさった宮内修平 第10代会長・社団法人初代理事長から引き継いだ舵取り役は、大変な重責といえます。これからの2年間、“働き盛り”となった本学会を、どの様に舵を切るか… 熟考と行動の時を迎えています。

 

 さて、最も注力すべき対応とは如何なるものでしょうか。「医療とは、これを行う者の為に在るのではなく、これを受ける者の為に在る」という理念の観点からは、患者・国民が期待し、願い、求める医療の提供に応えねばなりません。また、本学会の目的について、「定款」を紐解いてみますと、第2条に「歯科審美に関する学問と技術を研究し、歯科審美学の進歩発展を図るとともに、会員が顎口腔の形態美・色彩美・機能美の調和が図られた歯科医療を実践することにより、国民の健康増進及び福祉の向上、活力ある円滑な社会生活の実現並びに人々の幸福感の向上に貢献する」と記されています。お気付きとは思いますが、この目的には最終到達点というものが存在せず、良くなったな、向上したな、と感じた時には、次の問題点や欠点が現れることになります。これら次々に現れる“荒波”を乗り越えてゆくためには、会員それぞれの立場から少しずつでも知恵と力を出し合い、一人ひとり能動的に行動することが大切です。

 

 また、学会は会員の“求め”に応じた存在でもあるべきです。したがって、会員の“求め”を積極的に収集し、それらを反映させた魅力溢れるプログラムの策定によって、誰しもが参加したくなる学術大会・シンポジウム・セミナーの開催が必要です。加えて、患者・国民に対する質の高い審美歯科医療の提供を見据え、認定医・認定士・ホワイトニングコーディネーターを含めた資格承認について、会員の意見を汲み入れた新たな取り組みの検討が望まれます。国民・患者の切なる“求め”には、おのずと注目が集まり、その対応には社会的信用や責任が課せられます。具体例として、“歯の漂白”をクーリングオフの対象とする特定商取引法の政令改正が本年6月27日に閣議決定され、本年12月1日以降の契約から適用されます。法人格を得た本学会が担う審美歯科医療に対する役割・責務は、これまで以上に大きいといえます。

 

 さらに、学会はヒトによって構成され、運営され、発展してゆきます。すなわち学会としての“ヒト創り”や“システム創り”の良否は、学会の将来を左右する根幹といえましょう。そこで、本学会の事業を支える小委員会を含む17委員会では、それぞれの活動を通じた“ヒト創り”と“システム創り”を図り、明日の学会を担う人材育成と堅固かつ円滑な学会基盤の構築を押し進めることが求められます。

 

 これらの成果や評価は、残念ながら直ぐには現れず、時の流れの中で徐々に明らかになります。したがって、まずは患者・国民・会員に応える日本歯科審美学会を目指し、悔いを残さぬよう、ひた向きに取り組みたく思いますので、お力添えの程、宜しくお願い申し上げます。

2017年7月1日
理事長 奈良 陽一郎